土壌汚染調査は重要です。
土壌汚染の調査は手を抜くと大怪我をします。
土壌汚染調査の概要
1、土壌汚染状況調査のきっかけ
土壌汚染対策法においては、次の(1)〜(3)の場合に土壌の汚染について調査し、都道府県知事等に対して、その結果を報告する義務が生じます。
(1)有害物質使用特定施設(※)の使用の廃止時<法第3条>
●使用が廃止された有害物質使用特定施設の土地の所有者、管理者又は占有者(以下「所有者等」
という)に調査義務が発生します。
●土地の利用の方法からみて土壌汚染による健康被害が生ずるおそれがないと都道府県知事等の確
認を受けた場合には、調査義務が一時的に免除されます(利用の方法が変更され、当該確認が取
り消された場合には、再度調査義務が発生します)。
●調査義務が一時的に免除された土地において、900㎡以上の土地の形質の変更をする場合に
は、土地の所有者等は、都道府県知事等に対して、あらかじめ届出をする義務が発生し、土地の
所有者等に土壌汚染状況調査の実施命令が発出されます。
※有害物質使用特定施設・・・水質汚濁防止法第2条第2項の特定施設であって、特定有害物質を
その施設において、製造し、使用し、又は処理するもの。
(2)一定規模以上の土地の形質の変更の届出の際に、土壌汚染のおそれがあると都道府
県知事等が認めるとき<法第4条>
●一定規模(※1)以上の土地の形質の変更を行おうとする者には、都道府県知事等に対して、土
地の形質の変更に着手する30日前までに届出をする義務が発生します。
●この場合、環境省令で定める方法により、土地所有者等の全員の同意を得て、指定調査機関に調
査を行わせ、その結果を併せて都道府県知事等に提出することができます。
●届出があった土地について、都道府県知事等が土壌汚染のおそれ(※2)があると認められると
きは、土地の所有者等に、土壌汚染状況調査の実施命令が発出されます。
①特定有害物質による汚染が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合しないことが明らかであ
る土地
②特定有害物質が埋められ、飛散し、流失し、地下に浸透した土地
③特定有害物質を製造・使用・処理している土地又はしていた土地
④特定有害物質が貯蔵・保管されている土地又はされていた土地
⑤その他②から④までと同等程度に特定有害物質によって汚染されているおそれがあると認めら
れる土地
※1 一定規模・・・3,000㎡(ただし、現に有害物質使用特定施設が設置されている土地に
あっては900㎡)
※2 土壌汚染のおそれ・・・上記(①〜⑤)の基準に該当する土地かどうかを、行政が保有してい
る情報により判断します(規則第26条各号)。
(3)土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事等が認めるとき
<法第5条>
●都道府県知事等が健康被害のおそれがあると認めるときは、土地の所有者等に土壌汚染状況調査
の実施命令が発出されます。
2、自主的な土壌汚染調査
土壌汚染対策法においては、上記1の(1)〜(3)までの調査のほか、自主的に調査した土壌汚染の調査を基にして、都道府県知事等に下記3の区域の指定を任意に申請することができます(法第14条)。
ただし、法第4条第2項の規定による土壌汚染状況調査の結果があった土地は除きます。
<申請の条件>
●公正かつ公定法により実施された調査結果であることが必要です。
●申請を行おうとする土地に複数の所有者等がいる場合は、その全員の合意を得ていることが必要
です。
●土壌汚染が明らかである場合などにおいて調査を省略して区域の指定を申請することも可能で
す。
3、区域の指定等
都道府県知事等は、土壌汚染状況調査の結果報告を受けたとき、報告を受けた土地を、以下のとおり健康被害のおそれの有無に応じて、要措置区域又は形質変更時要届出区域(以下「要措置区域等」という。)に指定します。
土壌汚染状況調査の結果、汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がある区域です。
健康被害が生じるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要です。(法第6条)
土地の所有者は、都道府県知事等の指示に係る汚染除去等計画を作成し、確認を受けた汚染除去等計画に従った汚染の除去等の措置を実施し、報告を行うこと。(法第7条)
土地の形質の変更の原則禁止(法第9条)
(2)形質変更時要届出区域
土壌汚染状況調査の結果、汚染状態が土壌溶出量基準又は土壌含有量基準に適合せず、土壌汚染の摂取経路がない区域です。
健康被害が生ずるおそれがないため、汚染の除去等の措置は必要ではありません。(法第11条)
土地の形質の変更をしようとする者は、都道府県知事等に届出を行うこと。(法第12条)
「要措置区域」「形質変更時要届出区域」に指定されるまで
土壌汚染状況調査結果を都道府県知事等に報告
⇓
土壌溶出量基準/土壌汚染含有基準を超える有害物質が
あるかないか ⇒ ない 規制対象外
⇓ (基準適合)
ある
(基準不適合)規制対象
⇓
健康被害のおそれ(※)があるかないか ⇒ おそれなし
⇓ 形質変更時要届出区域(法第11条)
おそれあり
要措置区域(法第6条)
※健康被害のおそれの有無の考え方
●周辺の土地において地下水の飲用等があるかどうか。
●人が立ち入ることができる土地がどうか。
4、汚染の除去等
土壌汚染対策法の趣旨の一つは「汚染された土壌を適切に管理していくこと」です。そのため、健康被害のおそれのある要措置区域では、都道府県知事等は、土地の所有者等に対し、人の健康被害を防止するために必要な限度において、講ずべき汚染の除去等の措置(指示措置)等を示して、汚染除去等計画の作成及び提出を指示します。
指示措置は、
●地下水等経由の摂取リスクの観点からの土壌汚染がある場合(土壌溶出量基準に適合しない場
合)は、地下水の水質の測定、封じ込め(※1)等です。
●直接摂取のリスクの観点からの土壌汚染がある場合(土壌含有量基準に適合しない場合)は、盛
土等です。
なお、指示措置が土壌汚染の除去(※2)とされるのは、土地の用途からみて限定的な場合になり
ます。
※1封じ込め・・・汚染土壌を封じ込めて地下水等による汚染の拡散を防止する措置です。原位置封
じ込めや遮断工封じ込め等があります。
※2土壌汚染の除去・・・汚染された土壌を除去や浄化する措置です。掘削除去や原位置浄化があり
ます。
土地の所有者等は指示措置のほか、これと同等以上の効果を有すると認められる汚染の除去等の措置のうちから、講じようとする措置(実施措置)を選択することができます。
汚染除去等計画に記載された実施措置については、各措置に応じ技術的基準が定められており、これに適合しない場合は、都道府県知事等から計画の変更命令が出されます。
土地の所有者等は、汚染除去等計画に記載された実施措置が完了したときは、都道府県知事等に措置の完了等の報告をしなかえればなりません。
一方、形質変更時要届出区域では、土壌汚染の摂取経路がなく健康被害の生ずるおそれがないため、汚染除去等の措置を求められることはありません。ただし、土地の形質の変更を行う場合は、都道府県知事等にあらかじめ届出が必要になります。
5、搬出の規制
要措置区域等内から汚染土壌を搬出する場合には、事前の届出義務があります。このほか、汚染土壌の運搬は、運搬基準の遵守と管理票の交付・保存義務があります。
さらに、汚染土壌を要措置区域等外へ搬出する者は、原則として、その汚染土壌の処理を汚染土壌処理業者に委託しなければならないと定められています。汚染土壌処理業者とは、汚染土壌の処理を業として営む者を言い、営業に当たっては、都道府県知事等の許可が必要です。
なお、汚染土壌の処理の委託として、汚染土壌について処理の委託を行わずに、一定の条件を満たした他の要措置区域等へ移動することができます。
(1)搬出の届出
汚染土壌を搬出する際には、搬出する者は搬出に着手する日の14日前までに、都道府県知事等に対する届出の義務があります(法第16条)
(2)運搬基準
土壌の運搬に伴い、汚染を拡散させるおそれがあるため、運搬に関する基準が定められており、
自動車・船舶・列車等の車両の両側面に汚染土壌を運搬している旨の表示義務があります。
また、運搬には、自動車等に積載している状態のほか、保管施設での一時的保管も含まれます。
(3)管理票
土壌汚染対策法では、汚染土壌を搬出、運搬、処理又は使用する際に、管理票を使用することを定めています(法第20条)。管理票は、汚染土壌を運搬するときや処理するときなど、期限内に関係者に交付し、又は回付する義務などがあります。
(4)汚染土壌処理業
汚染土壌処理業とは、都道府県知事等から許可を受けて汚染土壌の処理を行う事業のことです。
許可を受けるには、施設と申請者の能力が基準を満たしていることのほか、欠格要件に該当していないことが必要です。
6、指定調査機関
土壌汚染対策法に基づく調査は、その結果によってその土地に対する土壌汚染対策の方針が左右されるため、信頼できる調査結果を確保しなければなりません。
そこで、調査を的確に実施することができる者を環境大臣又は都道府県知事が指定し、土壌汚染対策法に基づく土壌汚染の調査は、その指定を受けた者のみが行うこととされています。この環境大臣又は都道府県知事に指定され、土壌汚染対策法に基づく調査を行う者が指定調査機関です。
7、指定支援法人
指定支援法人とは、土壌汚染対策法に定める支援業務を適正かつ確実に行うことができると環境大臣から認められ、指定を受けた者のことです。
平成14年12月25日に、財団法人日本環境協会(平成25年4月1日公益財団法人に移行)が指定されました。
土壌汚染調査の費用
具体的な調査内容や規模によって変わります。
最初に行う地歴調査であれば、30〜50万円で済む場合もあります。個別のケースで変わ
ります。